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岩壺観音堂の蚕種貯蔵所跡

2022-03-20

 確定申告を提出した日の午後、解放感でドライブすることに。高崎から上野村方面へ走ります。

写真を見返すと山間の道なので寒々しく映りますが、この日は 5月の陽気で上着を一枚脱いでちょうど良い日でした。

 


神流町に近づいた頃、夫から行き先についての提案がありました。以前から気になっている洞窟があるから立ち寄ろうとのこと。

 

目的地は、462 号線の高八木トンネルの手前です。ちょうど日本中央バス「高八木」停留所があります。

近くには無人の八幡宮と公衆トイレがあり、そこが広い空きスペースになっていたので駐車しました。


手書きの看板がありました。
洞窟は『岩壺観音堂』というのだそうです。
看板によると、岩津保洞窟内に真言宗・普明寺の分院として建立された観音堂あり。この洞窟はどこかの大学が昭和 4、50 年代に 2 度発掘調査を実施しており、それによると縄文時代から弥生時代に至る複合遺跡とわかる。観音堂周辺からは土器、石器の他、屈葬の人骨や貝の腕輪、鹿の角等が出土。最奥部は昭和初期に蚕種貯蔵所として掘削された跡だという。


 看板横を進むと岩山の壁に大きな空洞があり、茅葺き木造のお堂が納まっていました。お堂は長らく修繕されていないようで、かなり痛んでいます。
ここが岩津保洞窟の入口です。


ここで遺跡が出土しているのですね。帰宅後にこの岩津保をネットで調べたら、出土した人骨は弥生時代人であるとの文章を東京大学の資料で見つけたので、調査したのは東京大学なのかもしれません。

お堂の周りは朴葉がたくさん降り積もっていました。奥へ足を一歩踏み出すと朴葉は膝下までめり込みます。私はそれだけでちょっと嫌な気分になりブツブツ言い始めたのですが、夫はそしらぬ顔です。


夫が私にここを提案したときは、鍾乳洞があるのではないかと話していたのですが、看板によると、この先は昭和初期に蚕種貯蔵所として掘削した施設跡ということです。

写真は明度を上げていますが、実際は仄暗い場所なので懐中電灯が必要です。独りだったら怖くて絶対に入りませんが、蚕関連施設だということを知ってしまいましたから行くしかありません。


私が躊躇しているうちに、先に入った夫の明かりは遠く微かに動くだけとなりました。そんなに奥は深いのかと不安になり入口付近から呼ぶと、「大丈夫。行ける、行ける」と引き返してきた夫。


私は携帯ライトの明度をマックスにして入坑。
手掘りと思われる掘削跡の通路を小さな明かりを頼りに入って行きました。通路の幅は手押し車が 1 台通れるくらいの広さ。かなり立派です。ゴミとか残骸のようなものはなく清潔だったので嫌な感じはありません。地面に水たまりもなく、軽装で入って大丈夫です。
と言いつつも、この先に夫が待っていることがわかっているから進めるのであって、やっぱり怖いですね。


ほう。20 mくらい歩いたところで通路は 90 度折れました。扉が設置されていた形跡が見受けられますね。


折れ曲がった地点から、奥にいる夫が撮った通路写真。入口から終着地点までは 40 mくらいあったかな。
これだけの長さを掘るには、どれだけの人数と時間を要したのでしょう。数年は掛かったでしょうね。
炭坑路だと木材で枠組みをして落石を防いだりしているイメージがあるけれど、ここにはそうした柱がありません。石が頑丈なのかもしれません。そう考えると、ほんとうに掘るのは大変だったろうな。


執着地点には四角い部屋がありました。高さは 3 mくらいはあるでしょうか、広さは 8 畳くらいです。
入口からここまで扉が 3 箇所設置できます。隔てを設けて一番奥の部屋が一定温度に保たれるように調節していたのでは。そしてこの部屋には棚を組み、蚕種を入れた木箱を貯蔵したのだろうと想像します。

再訪することがあれば温度計を持参したい。あとは、この付近に蚕種製造業者があった上での貯蔵所だったのか、業者から農家へ配布するための一時保管場所だったのかがちょっと知りたいなと思いました。


さて、ここからはおまけ。
探索後、橋から神流川のせせらぎや山の気配を感じながら休憩していると、夫がヤマアカガエルの鳴き声が聞こえると言いました。
私は田舎育ちですが生き物のことにはうとく、野鳥の鳴き声だと思い込んでいた声がカエルだと言うので、それをもっと間近で見たくなりました。鳴き声に耳を澄ませて辿ることに。


川への階段を下りたワンドにカエルがいました。
こちらが、その鳴き声です。


今が繁殖時期なのですね。ここのように日当たりの良い湾処や水田の止水などで繁殖するようです。これからは春が近づいたら、この鳴き声を探してみようと思います。

 

間近まで行くと、カエルたちは直ぐに隠れてしまいました。悪いことをしたな。ヤマアカガエルの卵を見るのは初めてだったので、そおっと触れてみました。弾力があって綺麗な卵でした。